嚥下障害、咀嚼障害者は激増しているにもかかわらず、臨床における適切な食品物性の研究はほとんど行われていません。そのため臨床現場では、適切でない食事形態のものを患者に提供している事例が数多く見られます。本研究においては、臨床現場に有用な情報を提供することを目的としています。 嚥下障害者が非経口摂取から経口摂取に移行する際、最初に口にするのはゼリー食が一般的になりつつあります。そのため、ゼリー食は高いリスクを伴いながらの摂食となることが多く、ゼリーの物性には慎重さが求められます。食品物性を「かたさ」「付着性」「凝集性」の3要素に別け、ゼリー様食品についての研究を行ないました。具体的には嚥下障害者に対して先進的な治療を行っている病院で提供しているゼリー強度(かたさ)を基準として、数十種類のゲル化剤を用い、濃度や温度を変化させた場合の物性変化などについて検討を行ないました。その結果、テストしたゲル化剤の中ではκカラギーナンにて作成したゼリーが温度による影響が少ないことや、高い凝集性を有し、口腔内でばらけることが少ないことなどがわかり、医療機関との連携のもと、κカラギーナンをゲル化剤として作成したゼリーを嚥下障害者に提供したところ、医療関係者には好評でした。さらに、各種ゲル化剤に対しpH、糖、でんぷんが添加された場合の食品物性に及ぼす影響についてや、ゼリー食に適したブレンダー(ミキサー)食の検討などを行ない、これらの結果については、平成12〜13年度では講演:福島県栄養士会「嚥下障害と栄養管理」(2000.10)他4回、学会:日本摂食嚥下リハビリテーション学会(2000.9)他3回などで順次公開している。
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