細胞状食品の品質に影響を与える因子の一つとして、細胞の中に存在するデンプン(細胞内デンプン)の糊化状態があげられる。細胞状食品の品質を考える上で、細胞内デンプンの熱的挙動を明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。 1.細胞内デンプンの糊化のタイプの分類 細胞内デンプンの糊化には、細胞壁の強靭さが関与していることがこれまでに明らかになっている。今年度、サツマイモの細胞内デンプンの糊化の機構について検討を行ったところ、細胞壁は強靭でないにもかかわらず、細胞内デンプンの溶解および膨潤が抑制されることが明らかとなった。豆類、イモ類、カボチャの細胞内デンプンの糊化抑制のメカニズムを比較検討したところ、細胞壁の強靭さ以外に、1個の細胞中に含まれるデンプン粒子の数(細胞内デンプン濃度)も細胞内デンプンの糊化に影響を及ぼすことが示唆された。 2.細胞内デンプンの老化の測定方法の検討 細胞内デンプンは糊化した後、当然時間と共に老化することが考えられる。しかし、細胞内デンプンの老化を測定する方法は現在確立されていない。そこで、まず測定方法について検討を行った。小豆を用いて、細胞内デンプンの糊化を測定するのに有効な方法である示差走査熱量測定(DSC)によって検討を行ったところ、老化の程度を測定することが可能であった。小豆に関しては、細胞内デンプンの老化の程度は単離デンプンと比較して著しく低かった。これは、細胞内水分量の違いに由来する糊化状態の違いによるものであると考えられた。
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