生活習慣病の原因の一つとして食塩や砂糖の過剰摂取が問題になっているが、栄養や健康面からの必要性を強調することだけで、嗜好的・習慣的な調味料使用法を解析することは難しい。食嗜好や味付けの好みが確立される過程や、そのメカニズムを検討することによって、嗜好改善のための具体的な方法論を確立することが必要であると考えられる。本研究では、調味料使用量の実測を通じて、個人別の好みや嗜好の違いを数量化し、親子間や地域間の嗜好の異同を詳細に検討し、嗜好を決定する因子とその影響力を明らかにすることを目的とする。そこで、本研究の1年めにあたる平成11年度では、市販調味料の糖分、塩分濃度の測定や数種の煮物作成時の糖分、塩分濃度を測定し、煮物調味における糖分、塩分濃度から、同一人物の調味の傾向を定量的に検討した。 調味料の糖分(還元糖、全糖)はベルトラン法を、塩分はモール法を用いて測定した。煮物数種類は、長崎県と大阪府在住の女子短大生に作成させた。煮物の糖分・塩分濃度は、材料、煮汁および使用した調味料の重量を測定して求めた。その結果は次のように要約できる。 1.日頃食べ慣れている味付けで煮物の調理を行ったところ、調理後の糖分・塩分濃度は、長崎県在住の女子短大生の方が、大阪府の場合よりも糖分濃度が高く、塩分濃度には地域差はほとんど見られなかった。 2.各煮物調理における、糖分と塩分の使用比率は、長崎県在住の女子短大生の方が、大阪府の場合よりも糖分使用比率が高く、味付けに砂糖の甘みを中心に行う傾向が見られた。 なお、平成12年度は、食嗜好に関する意識調査、官能評価および地域別の食嗜好に関する調査から食嗜好形成メカニズムの検討を行う。
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