研究概要 |
本研究の目的は,図形の概念形成を促進する学習指導の方法を確立するために,既に理論的に抽出されている要因の妥当性及び実行可能性を検証することである。 本年度は次の3つの結論を得ることができた。第一に,状態3から状態4への移行を促す要因の意義及び妥当性を明らかにした。すなわち,状態3は図形の概念間の関係についての理解を促すために重要な役割を果たし,図形の概念間の包摂関係を理解できるようになる状態4に到達するために必要不可欠であるという特徴を明らかにした。その結果,状態3に到達すること自体が状態3から状態4への移行を促す要因であることを示した。この成果を,日本科学教育学会誌"Journal of Science Education in Japan"に発表した。 第二に,状態3から状態4への移行を促す要因を考慮した合同や相似の概念についての学習指導,すなわち,モザイクパズルを用いた図形やその関係についての理解を促す学習指導を提案した。その学習指導では,合同及び相似の観点から図形の概念を捉え直すことによって,図形の概念及びその関係についての理解が深まることを示した。この成果を,横浜で開催された日本数学教育学会論文発表会で発表した。 第三に,提案した学習指導の実行可能性を調べるために,モザイクパズルを用いた図形構成に関する小学校6年生を対象にした授業を実施した。子どもたちは図形の学習に意欲的に取り組み,図形の構成要素の関係などの観点を決めて,それに従って図形を構成した。しかし,図形間の関係を明確に捉えるまでには至らなかった。そのため,図形間の関係に着目できるような発問などを工夫し,再度授業を実施することが来年度の課題となった。
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