研究概要 |
数学的モデリングにおける討論の有効性と限界,並びに討論を設ける適切な時期を明らかにするために,討論の有無,また討論を設ける時期によって,生徒を3つの群に分け,オイルパイプラインの問題に取り組ませた。すなわち、A群(41人)は、「レポート(1週間)→テスト(90分)」、B群(40人)は、「討論(90分)→レポート(1週間)→テスト(90分)」,C群(39人)は、「レポート(1週間)→討論(90分)→テスト(90分)」といった流れで、3つの群は区別されている。 調査より,本調査で用いた問題に限定されるが、モデリングを経験していない生徒の集団でのアプローチについて,いくつかの特徴が見出された。 例えば、モデリングの指導でモデリングを促進する考え方に焦点を当てる場合,多様な観点から生徒の考えが相互作用するように討論を設けることは効果的である。特に,討論をレポート作成の前に設けると,本質的要因を含むいろいろな要因が引き出され,その結果として,小グループ間でのばらつきが少なくなる傾向にあり,平均的に効果的であることがわかる。ただし,集団での討論をレポート作成のあとに設ける場合でも,各自のレポートの間に意味のある相違点があれば,生徒同士の考えの有機的なやりとりが期待でき,集団での討論は十分に効果的に働くといえる。しかし,討論をレポート作成の前に設けたグループでさえ,止揚された考え方の理解についてはまだまだ十分なものではなく,教師の支援が必要であることが示唆される。
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