平成12年度は、主として次の2点を中心に研究を行った。 1.ドイツの理科教育におけるヘルバルト・インパクトの明確化 19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ドイツで活躍した理科教育関係者の中から、コンラード(P.Conrad)とバイヤー(O.Beyer)を取り上げ、彼らの理科教授論、教科書・教材、教授案、及び教授記録に見られるヘルバルト学派の影響を明らかにした。また、こういった当時の理科教授論や理科授業実践のあり方が、ドイツ各地に普及していった状況、並びにその状況と国家の教育政策・教育課程との関係を、教則、教授法教科書、教科書・教師用書、師範学校の教育内容、教育雑誌などをとおして明らかにした。 2.日本の理科教育におけるヘルバルト・インパクトの明確化 上記の研究成果を踏まえて、明治後期の理科教育にヘルバルトの教授理論が移入された経緯、並びにそれが普及していった過程について明らかにした。前者については、棚橋源太郎をはじめとする高等師範学校関係の人々の活動を取り上げ、彼らの理科教授法研究の内容、並びに研究の着想に至った経緯を中心に検討した。後者については、明治期の教則、師範学校の教授法教科書、師範学校の教育内容と実践、教科書・教師用書、文部省講習会に関わる資料、教育雑誌などを用いて、ヘルバルトの教授理論が理科授業実践に普及していった実態について検討した。そして、このような実態を制度的背景(明治国家の教育政策)と理論的背景(理科教授法、理科教授論の形成)から考察した。
|