実際にメディアを用いた遠隔教育を行っている大学を対象とし、その概要についての資料収集を行った。今年度は基礎的資料の収集と現場の意見の聴取に専念し、現時点で5校の通信制大学と2校の専門・各種学校を訪問して調査を行った。 通信制大学の運営は、まず、教職員と学生との間を結ぶ教育メディアの選択によって、大学の色彩が規定される。テレビを使用すれば一斉授業の色彩が強く、インターネットを使用すれば個別授業の色彩が強くなる。運営面からは、昔の教室内の教授活動とは異なり、遠隔教育は多数の教職員及び学生が一度に同じメディアシステムを使用するために、運営開始時に教育メディアを一度選択すると、それを交換することは困難である。まずは教育目標を念頭に置き、教育メディアの選択を重視する必要がある。 メディアの使用について聞き取り調査からは、当初の研究計画にあった主要な設備、機器等の施設設備の体制、利用学生数、人員、予算等の運営の体制とともに、学生の質も遠隔教育に大きな影響を与えているという意見を多くの関係者から得た。これらを詳細に分析する必要があるが、これについては来年度の課題としたい。また、教育現場での聞き取り調査からは、自らの組織が有しているメディアは所与のものと考えられているために他のメディアを考慮することがなく、他組織と比較して自組織の改善策を探るということの困難さが見て取れた。大学における遠隔教育を俯瞰し、メディア利用の際の長所と短所、問題点、すなわち何の要因がメディアの効率的利用という成功につながっているかを明らかにすることの必要性が確認された。 来年度は、これらの調査結果を参考に、教育メディアに関するニーズ把握と適正度判断のための質問紙調査を行い、学生の立場から改善のための方策を探る。
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