本研究は、家庭科教育における総合的なカリキュラム開発を目的とし、男女共同参画社会の指針として社会的に注目されているジェンダーへの理解をテーマとする総合的な学習のあり方を検討するものである。平成11年度は本研究の1年目に当たり、関連文敵の分析と小学校における授業での参与観察を実施した結果、以下の点が明らかになった。 1.英国におけるPersonal Social Education教材の分析 英国で教科外の学習として総合的に取り組まれているPersonal Social Education(PSE)では、「自分への気づき」の内容の一環としてジェンダーが取り上げられている。生徒が身近な場面に目を向けると共に自分白身を省察し、現代社会に潜んでいるジェンダーの秩序について気づくような学習教材が考案されており、日本におけるジェンダーの視点に立ったカリキュラムを構築する上で、有意義な示唆を得た。 2.小学校第6学年の家庭科において、「ジェンダーヘの気づき」を学習のねらいとした一連の授業プランを考案し、3クラスにおいて実践を展開した。研究者は、観察者として授業に参加し、授業風景をビデオに録画すると共に、実践者である教師に対して、授業内容に関するインタビューを行った。一連の授業が終了した後、授業を受けた小学生に対し、授業への評価についてのアンケート調査を実施した。その結果、小学生、たちは「ジェンダー」について学んだことについて、肯定的にとらえており、固定的な性別役割観に異議を覚えると共に、「男らしさ」や「女らしさ」についてより柔軟な考え方をするようになったことが明らかになった。また、児童が自ら調べ、発表するという場を設定したことは、自己表現としての学習の価値が見出されていた。
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