本研究は、学校を基礎にした総合学習のカリキュラム開発に取り組む教師ティームの組織と仕事を対象に、学校の主体的なカリキュラム開発を支える教師ティームの協働とネットワークを実践的に探究しようとするものである。今年度は、大阪府下公立小学校第5学年の教師ティーム、兵庫県下公立中学校の研修部を中心にした教師ティームの学びあいと専門的成長、神戸市の公立高等学校における阪神大震災の経験からの総合学習のカリキュラム開発と実践、を対象に、参加観察フィールドワークを継続的に実施し、教師ティームの組織と仕事に関するデータを集め、その変化・革新のプロセスを追跡した。そこでは、教師ティームと研究者ティームの協働アクション・リサーチの方法論を採用し、それを「文化歴史的活動理論」にもとづく「発達的ワークリサーチ」として捉え、教師ティームみずからが組織と仕事を転換し、未来の新たな実践のヴィジョンやアイディア、その実現のためのツールを生み出してゆくために、葛藤や衝突の経験を乗り越え、互いの特徴や違いを活かしてゆく、学びあいと専門的成長のプロセス、社会や地域の諸組織とのネットワークの深まりに注目している。本研究ではティームの組織的・革新的な学びあいを「拡張的学習」の理論から捉え、変化・転換のための積極的な「介入」を「発達的ワークサーチ」として試みている。今年度の成果となる知見としては、教師ティームの「拡張的学習」が、(1)個人レヴェルでの実践上の問題点を学校の集団的活動システムのレヴェルでの矛盾として理解し、新しい活動の対象/動機の協働構築によって、創造的・発達的な解決のデザインと実施へと進んでゆくこと、(2)教育活動の仕事や組織の新たな責任を共有し、「私たちの責任」としてティームが協働する責任へと進んでゆくこと、がティームとネットワークをベースにした総合学習の開発にとって鍵となっていることを見出した。
|