大阪府高槻市立小学校2校、兵庫県川西市立中学校1校との連携によって、現場での総合的学習のカリキュラム開発、教師ティームの協働、教師の専門職性の開発、地域と結ぶ公立学校のモデル、などのテーマに関する長期的介入研究を実施した。これは、現場において総合的学習のカリキュラム開発を支援すると同時に、それをきっかけに学校の組織と活動形態、教師の仕事の構造を変化させ革新することを目指した協働をつくりだそうというものである。具体的には、「チェンジ・ラボラトリー」と呼ぶ場を定期的に設け、現場で実践者と研究者のティームが会合を持ち、いまここで生まれている実践の矛盾を乗り越えていくために、学び合い協議し問題解決・意思決定を拡張的に創造していく手法をとった。 このような研究協議会を上記学校において20回以上行なった。それらについてはカセットやヴィデオにすべて記録として収め、文字記録を作成した。そして、その分析とフィードバックによって、教育活動とそのシステムの変化過程に詳細な考察を加えていった。 「チェンジ・ラボラトリー」における情報や認識の交換、問題解決、意思決定は、次のような三つの次元、<実践の省察>-<仲介的なアイディアや概念>-<モデル/ヴィジョン>のあいだを行き来しながら展開する。そのような往還を通じて、総合的学習の実践を創造する新しい活動システムを徐々にデザインし直していくのである。本研究では、そのような学校の教育活動の新しいデザインとして「地域プロジェクトとしての総合的学習」というモデル/ヴィジョンが得られている。これは、総合的学習を「地域において新しい価値や意味をつくりだそうとする活動のプロジェクト」と捉えさせるものである。このモデル/ヴィジョンから上記学校では、「地域の人と人を結びつなぎ、地域を新しくつくりだしていくセンターとしての公立学校」という未来像を構想し始めている。
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