中学校社会科地理的分野における読図学習に、本研究で開発した3次元地図帳システムを活用した授業計画を練り試行した。対象は、1年生33名である。事前に行った地理に対する意識調査では、91%が地理が好きと答えながら、「地理は覚えることが多い」70%、「地理が為になると思えない」45%という回答を得ている。計画では、、本システムを動機付けに利用し、地理的な探索と発見を仮想空間で擬似体験させることで、地理的探究心の啓発と読図への関心を高めさせることをねらった。 授業内容は、生徒にインターネットを通じて提供される教材(VRMLで表現された仮想立体地形模型と応用アプリケーション)をブラウザ上で閲覧しながら地形図との比較を行わせ、分散環境下で協調して土地利用を地形図から読み取り、メッシュ単位で登録し、その結果を再度立体的に閲覧して、地域の特徴を考察しながら、実際に現地調査が必要な項目や課題を見つけさせた。 作業別に画面を切替、全てマウス・クリックのみの操作は、93%の生徒が「操作は簡単」と答え、導入時の操作指導を簡略化させることができた。また計画通りの時間で授業は終了し、通常の単元より短くかつ広範囲な地域の土地利用図の作成が可能となった。 終了後、余田が行ったkellerのARCS動機付けモデルに基づくアンケート調査による分析を行った。この分析は、従来の授業と今回の授業とを5段階調査で、注意(Attention)、関連性(Relevance)、自信(Confidence)満足感(Satisfaction)の観点別に設定した34の質問で比較評価するものである。t検定を行ったところ、df=32において、今回の授業の有意差が見られた項目は、P<0.05で、関連性:「面白かった」、自信:「先生は工夫をしていた」であった。P<0.01では、注意:「眠くならなかった」、「学習内容に新しさを感じた」であった。
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