本研究では、歌唱訓練およびリズム訓練を導入した英語発音指導法の効果を調査することによって、歌唱訓練とリズムやメロディーなどの音楽的要素の訓練を通した英語音声表現教育の可能性を検証することを目的に実験を行った。被験者は日本人女子大学生56名で2つのグループに分かれ、統制群では、英語の発音の理論的説明に加えてある英語の歌詞を音読を中心として朗読の練習を行い、実験群では、統制群と同一の指導者によって同一の英語の歌詞をメロディーにのせて歌う訓練を実施し、指導期間の直前と直後に各被験者の英語朗読を録音した。その音声を複数のネイティブ・スピーカーに評価させ、英語発音の上達度をグループ間において比較考察した。評価の対象となる発音要素の項目は、母音・子音の発音、リズムのナチュラルさ、音のつながり、スピード、全体的印象に関する7項目とした。 平成12年3月中旬から現在に至り被験者各々の発音を指導の前後で比較し、グループ間で各項目における指導前後の発音の伸びを調べている。これまでに得られた傾向としては、(1)英語の単音の発音に関しては、両グループで上達度に有意な差は認められず、したがって、単音の発音の上達には、歌唱訓練は有効な指導手段であるとは言えないようである。逆に、(2)英語の自然なリズム、音の連結などの超音節要素と、スピードや発話の全体的印象に関しては、歌唱訓練を通して指導を受けたグループの英語のほうが従来の音読指導のグループよりも高く評価されているようである。 今年度の実験においては、グループ間での指導の時間割り当や被験者数、被験者がこの実験以外に受けていた英語音声訓練の度合い、以前に受けていた音楽的地域や訓練の有無などに差があり、これらの被験者に対する周辺環境を調査した上で再度実験する必要があると思われるので次年度はこれらの点を踏まえてさらに研究を続けてゆきたい。なお今年度の研究の過程で得られた知識は、その一部を口頭発表として12th World Congress of Applied Linguistics(応用言語学会)で、また論文としてJACETBULLETIN No.31(大学英語教育学会紀要2000年3月15日発行)において発表した。
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