本研究は、大正自由教育期に様々に展開された地理と歴史の授業改革を、具体的な資料の発掘と聞き取り調査にもとづいて明らかにしようとするものである。今年度は、主な研究対象を鳥取県の成徳小学校において研究を進めた。具体的には、平成11年8月に成徳小学校を訪問して、当時の資料収集と関係者(現校長と当時の実践者のご子息)の聞き取り調査を実施した。その際に収集した資料の一部を示すと次のとおりである。 ・成徳小学校教育研究部『新読本』巻一・巻二、昭和6年・昭和7年。 ・伊佐田甚蔵『三四年文化科三郎の旅行』昭和3年。 ・成徳小学校教育研究部『倉吉郷土読本』上巻、昭和6年。 これらは、総て成徳小学校独自に発行されたものであり、本校でしか現存が認識されていない。そのため、成徳小学校長の許可を得て、これらの全てをコピーさせていただいた。将来的には、このコピーをCDへ電子的に保存する方向で検討中であり、一部は今年度すでに実験的に実施を行った。 また、収集した資料をもとに、当時の地理や歴史の授業だけでなく、成徳小学校独自の地理と歴史の統合教科「文化科」の授業分析を進めた。そして、平成11年10月9日に開催された日本社会科教育学会第49回全国研究大会において、分析結果の一部を「大正自由教育期における『文化科』の創造-鳥取県成徳小学校の総合的な学習の実践-」との主題で発表した。更に、平成12年1月には、『国立教育研究所広報』第124号に「大正自由教育期における総合的な学習の展開-個別既存教科内の変革から総合的特設教科の開発へ-」を発表し、本研究成果の一部を公表した。
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