今年度は、1)中級レベルの文章の特徴と読解が困難になる要因の分析、2)言語的知識の自動化の程度を調べ、必要に応じて知識の活性化、自動化を促す試作教材の作成、3)アイカメラでの読解中の眼球運動の記録の収集と分析、を計画、実施した。 中級レベルの文章に関しては、特に中級前半から半ばにかけては、文章中の使用語彙、文型ともにコントロールされ、外国語学習という視点からトピックが選ばれ、文章が作成されていることが多い。そのため、文章作成段階で学習者の既有知識を予測されてはいるものの、必ずしも学習者が共通に文章の背景的知識を持っているとはいえない。言語的には、省略された主語や目的語等の把握、指示詞の指示内容の理解、談話の中での言語形式、例えば接続表現やムード・モダリティに関係する表現(例ハズダ、ワケダ、モノダ等)の正確な意味理解が要求されると言える。 言語的知識の自動化の程度を調べるために、コンピュータ教材を試作し、5名の学習者に対し試用した。その結果、ある程度の自動化の程度が測定できるという結果が得られた。また、知識の活性化、自動化を促す試作教材についても、範囲を限定して教材を試作、試用し、現在は教材を改良し本教材を作成している段階である。 アイカメラによる読解中の眼球運動の記録は、千葉工業大学のプロジェクト・マネジメント学科の教官に協力を依頼し、データの収集を行い、初級修了段階の読みと中級後半の読みの比較を実施した。現在は収集データの分析を行っている。現在のところ、未習語には全体として注視が多く、停留時間も長いことがわかっている。これは初・中級どちらも未習語の意味処理には、既習語の意味処理と比較し格段に処理のために容量が使われていることを示していると考えられる。
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