本年度は前年度に収集したデータや過去の研究の知見をもとに、日本語教育のための文法教材という観点に基づいて具体的な記述を行った。 その成果は第一に2000年5月に刊行された共著『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(スリーエーネットワーク)に現れている。ここでは、初級を教える教師を読者として想定しつつ、日本語文法の全容を体系的に記述している。 第二の成果は2001年2月に刊行された単著『新しい日本語学入門-ことばのしくみを考える-』に現れている。ここでは、日本語学関係の学生、日本語教師などを含め、より一般的な読者を想定して、日本語に関する様々な現象を説明している。 第三の成果は2001年3月に刊行される本研究の報告書である。ここでは、上述の2つの著書における記述を踏まえ、学習者が日本語の文章を読んだり、日本語母語話者と自然な会話をするのに必要な文法的知識を学習者が自ら確認できる形で記述している。 この他に、2000年10月には「教育文法に関する覚え書き-「スコープの「のだ」」を例として-」(『一橋大学留学生センター紀要』第3号)において、教育文法に関する実証的な論考を行っている。 なお、これ以外に現在第一の成果の続編である『中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』(共著。スリーエーネットワーク)を準備中でこれは2001年9月に刊行される予定である。ここでは、日本語教師や上級レベルの日本語学習者を読者として想定し、より緻密なニュアンスを表現するために必要な文法的知識を記述している。
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