時系列の独立性検定には種々の考え方が可能であろう。本年度はまず (1)多変量ARモデルによる独立性検定 を考察した。データに多変量ARモデルを当てはめ、推定された係数行列およびWNの分散行列の非対角要素が零か否かを検定する定式化である。これは線形過程の母数の検定問題の具体例であり、漸近カイ2乗検定であるLR検定、Wald検定、LM検定が擬似尤度から構成された。来年度、及び将来の研究を考慮し、(1)のアプローチによるデータ解析環境を整備した。具体的には必要な数値プログラムを開発し、以前使用していた2次元時系列データの中には(1)の意味で2成分が非独立と支持できる、あるいは、独立ではないかと思われるものが混在していることを検証した。しかし、モデルのミススペシファイの可能性も考慮に入れなければならず、 (2)スペクトル行列の非対角成分を利用した検定 へと話を進めた。実は、ARモデルでは、係数行列およびWNの分散行列の非対角要素がすべて零であればスペクトル行列の非対角要素も零になっている。スペクトル行列の非対角要素が零か否かの検定は2乗積分から定式化される。スペクトル行列のモデルを想定することもできるが、(1)の類似が予想できており、興味の対象はノンパラメトリックな扱いである。来年度は早期にピリオドグラムの2乗型の漸近性質を明らかにし、検定統計量を提案する予定である。
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