複雑な現象を記述するために、高度に構造化された統計模型における推測理論の研究が本研究の主題であるが、近年の研究動向と申請者の過去の研究を踏まえ、以下の項目を研究目的とした。(1)古典的な線形モデルを含む拡張さられたモデルの提案とその基本的な定式化。(2)いろいろと提案されているモデルとの関係を明らかにすること。(3)欠損値データに対するモデルの構築とモデルに基づく解析手法の提案。更に、EMアルゴリズムによる解析との比較。(4)LCIモデルにおける母数の同時推定理論や検定理論の確立すること。(5)理論的な研究の成果から得られた手法をモンテカルロ実験により数値的に検討すること。 (2)(3)については本年度においてはとくに新しい成果が得られなかったが、来年度では因果関係を記述することに優れているグラフィカルモデルの拡張や等質円錐体上の新しい多変量モデリングについて研究を進めていくつもりである。(4)については、LCIモデルにおける共分散の同時推定の枠組みにおいて、最尤推定量を一様に改良するミニマックス推定であるジェイムス-スタイン型の推定量やそれをさらに改良する直交不変ミニマックス推定量を導出することができた。また、楕円分布からのデータに基づく検定方式についても研究を進めていく。来年度には、(3)における欠損値があるデータについてやLCIモデルよりも広い可解なグラフィカルモデルにたいしてこの結果を拡張していきたい。今年度に得られた理論的な結果を数値面から検証することも来年度の(5)に於ける課題となる。
|