パラメトリックモデルを用いた平滑化推定量を初期推定量とし、それをノンパラメトリックに調整したセミパラメトリックな平滑化推定量を提案し、その推定量の良さ・挙動を理論的、数値的に調べた。密度推定においては、このセミパラメトリック推定方式による密度推定量のクラスを提案した。統計的漸近理論を駆使した理論的考察により、提案されたセミパラメトリック推定量は我々が想定したパラメトリックモデルがデータの背後にある構造を含むように、あるいは少なくともその近傍に構成されている時にはノンパラメトリック推定量、特に核型推定量を優越する事がわかった。その優越の度合いはパラメトリックモデルの持つバイアスにより規定される。また、パラメトリックモデルがバイアスを持つ場合でも、このセミパラメトリック推定量は一致性を持つ事が証明され、ノンパラメトリックな調整項の重要性が確認できた。提案された推定量の良さの尺度としての平均積分2乗誤差をシミュレーションで数値的に評価し、理論的結果を検証した。また、そのクラスの中で漸近的に最良の推定量も導出し、推定量の構成アルゴリズムを提案した。回帰平滑化でこのセミパラメトリック手法を用いた場合、得られる推定量の良さを従来の多項式回帰(パラメトリック)や局所多項式回帰(ノンパラメトリック)と比較し、密度推定の場合とほぼ同様の結果を得た。ここでは、従来のパラメトリック回帰推定量とその残差のノンパラメトリックな平滑化推定量と加法的に結合する方法が有効であることがわかった。回帰におけるこのセミパラメトリック手法は、多変量回帰、成長曲線分析にも拡張された。回帰における結果は部分的に、広島大学での日本数学会秋季総合分科会やアメリカ合衆国アラバマ大学で開催された国際会議において発表した。
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