本研究では進化的計算を用いた大規模ネットワーク上における計算資源管理をそれぞれのノードで独立に行うアルゴリズムをさらに改良し、その有効性を大規模シミュレーションにより検証することを目的としていた。そのために、パーソナルコンピュータを高速ネットワークで多数結合されるBeowulf型並列計算機を構築し、その上で並列ネットワークシミュレータを実現した。これにより、大規模ネットワークのシミュレーションを可能とした。シミュレーション結果を基に経路制御アルゴリズムの改良を行うとともに、その有効性を示した。今年度の成果としは、比較的小規模なBeowulf型並列計算機を構築し、その上での分散ネットワークシミュレータを開発した。近年のパーソナルコンピュータおよびネットワーク技術の進歩は著しく、汎用のマイクロプロセッサおよび通信デバイスにより以前では大型計算機や専用の並列計算機に匹敵する性能を極めて低いコストで実現することが可能となった。具体的なアルゴリズムの改良点としては、これまで提案されてきた進化的手法である遺伝的アルゴリズムによる手法で用いられてきた、突然変異および交叉手法について、経路上の各リンクの負荷情報に基づいたラマルク的手法を適用することで、アルゴリズムの性能を向上させることができた。
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