平成11年度には、方向の制限された幾何の1つであるλ-幾何を扱った。ここで、λ-幾何とは、すべての図形がπ/λ方向の線分から成るような幾何である。本年度は、特に、計算機何学上の最も基本的な概念の1つであるボロノイ図に焦点を絞った。すなわち、良く知られているユークリッド幾何でのボロノイ図の作成法を基に、λ-幾何におけるボロノイ図の作成法の開発を行った。 ユークリッド幾何でのボロノイ図作成法として、分割統治法、平面走査法、逐次添加法、3次元凸法帰着法等が知られている。このなかで、分割統治法および平面走査法を修正することにより、λ-幾何でのボロノイ図を効率良く作成できることがわかった。分割統治法を修正して得られるアルゴリズムは、λ-幾何のボロノイ図をO(λnlogn)時間で求めることができる。また、平面走査法を修正して得られるアルゴリズムは、λ-幾何のボロノイ図をO(λnlogλn)時間で求めることができる。なお、従来の方向制限幾何では、2点の"2等分線"や2本の"2等分線"の交点をO(1)時間で求められるという仮定の下で、O(nlogn)時間でボロノイを求めるアルゴリズムが知られていた。λ-幾何で2点の"2等分線"や2本の"2等分線"の交点を求めることは、単純に行なうとO(λ^2)時間かかってしまう。よって、従来の手法を単純に行なうと、λ幾何のボロノイ図を求めることに、O(λ^2nlogλn)時間かかってしまう。これに対して本研究で開発した手法は、従来法より効率良くボロノイ図を作成できる。
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