研究概要 |
前年度までは、方向の制限された幾何の中でλ-幾何を扱った。ここで、λ-幾何とは、全ての図形がπ/λ方向の線分だけからなる幾何である。λ-幾何は、原点で交わるようなλ本の直線を軸と考え、いずれかの軸に平行な線分だけを扱った幾何とみなせる。このとき、λ-幾何では、軸同士の成す角度が均等である。これに対して、平成12年度には、方向の制限をλ-幾何より一般化した凸距離幾何を扱った。ここで、凸距離幾何とは、原点で交わるようなk本の直線を軸と考え、いずれかの軸に平行な線分だけを扱う幾何である。このとき、凸距離幾何では、軸同士の成す角度は均等とは限らない。なお、2点x,y間の凸距離d_c(x,y)は、点対称な凸多角形Cの中心点をx(あるいはy)において、相似なままCをd_c(x,y)倍したときy(あるいはx)がその境界上に乗るような値である。この凸距離幾何において、凸多角形Cを正2λ角形にすれば、凸距離幾何はλ-幾何と同等である。 前年度においては、λ-幾何で、n個の母点に対するボロノイ図をO(λnlogλn)時間で求めるアルゴリズムを2種類開発した。ここで、一つは分割統治法に基づく手法であり、もう一つは平面走査法に基づく手法である。本年度は、これらの2つの手法が、λ-幾何から凸距離幾何に拡張可能であることがわかった。即ち、凸距離幾何上でのボロノイ図を求める高速なアルゴリズムを2つ開発した。一つは、分割統治法に基づいたO(kn log kn)時間アルゴリズムであり、もう一つは平面走査法に基づくO(kn log kn)時間アルゴリズムである。なお、従来はこれらの方向制限幾何上でボロノイ図を求めるアルゴリズムの解析は、kあるいはλを定数として扱っている。これに対して、本研究ではkあるいはλは定数とは限らない。
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