本年度は、プロファイル結果に基づいて並列化をおこなうFortranコンパイラの試作をおこなった。このコンパイラは、入力されたFortranプログラムから仮実行用プログラムを生成し、プロファイルを得るためにそのプログラムを実際に実行する。そしてその結果にもとづいて元のFortranプログラムをコンパイルし自動並列化する。この処理系は実際にPCクラスタの上で動作するようになり、次年度の研究に必要なデータを収拾することができた。次年度には、この試作コンパイラを改良して、我々のアイデアの有効性を示すような結果を得られるように務める。 さらに関連研究の調査もおこない、我々のアイデアはinspector-executorとして知られる自動並列化方式の改良型と位置付けられることがわかった。通常のinspector-executor方式では、実行時にinspectorと呼ばれる処理がおこなわれるが、我々の方式ではinspectorはコンパイル時の仮実行処理の一部としておこなわれる。我々のコンパイラは、inspectorの処理結果を利用してコンパイルすることができるので、高度に最適化されたコードを生成することができると予想される。通常の方式では、inspector処理の結果得られた情報をもとにコンパイルされたコードを変更することはできないので、我々の方式のような最適化は非常に困難であると考えられる。
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