本研究のシステムは計算処理系と光学表示系から構成される。本年度は計算処理系を中心に研究開発を行った。計算機上でホログラムを生成する際、計算時間のほとんどすべては光の重ね合わせ計算に費やされる。この計算負荷が大きいため、ホログラフィによる立体動画像システムの実現は困難なものになっている。本研究では専用計算機を開発することによって、この克服を試みる。 本年度は、光の重ね合わせを専用に計算する回路をPLD(Programmable Logic Device)に組み込んだ専用チップの設計・開発を行った。高速処理を行うためには計算回路の並列化が不可欠であり、そのためには演算処理を行う回路を1チップ化することが重要である。今回はこのチップを2個搭載した専用計算機HORN-3を試作した。HORN-3の回路はPCI用基板に実装した。市販のパソコンのPCI拡張スロットに差し込んで使用する。20MHzで動作し、約1.2Gflops相当の演算速度に達した。実測でPentiumIIパソコンの約150倍の速さであった。さらに、液晶ディスプレイを使って簡単な光学系を構築し、HORN-3を接続したところ、画素数200程度の小さな立体像ではあるが、動画像表示に成功した。今後、この専用チップを多数並列化することにより、大幅な計算処理速度の向上が可能になるものと見込んでいる。
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