研究概要 |
近年,VLSIシステムの極限微細化・高並列化・低電圧化のトレンドに伴い,内部配線の激増,さらには配線間クロストーク等の雑音に起因する問題が深刻となりつつある.本研究課題では配線問題を本質的に解決するために,これまで情報通信の分野で用いられてきた信号の高効率伝送の概念を,チップ内および基板上に取り入れた新しい演算処理方式「スペクトル拡散情報処理」の可能性を検討することを目的としている. 本年度は,スペクトル拡散通信に基づく情報処理の応用として画像処理を検討した.スペクトル拡散画像処理の利点として,(1)M系列に基づく基底を用いることにより,一般的に使われるDCT基底が不得手であった文字情報等の複雑な画像の高圧縮が可能,(2)耐ノイズ性に優れた符号の性質を利用することにより,画像伝送中に混入したノイズの誤差を2次元的に拡散する自動訂正機能などが期待される.しかし,従来のスペクトル拡散処理は1次元の音声信号処理を対象にしており,2次元画像の高効率な処理手法はほとんど研究がなされていない.また,「疑似」直行系列を用いているため符号間干渉が存在し,画像劣化の要因となる.この問題を解決するため,本研究では,まず,M系列基底を厳密に直交化し,M変換と呼ぶ2次元画像処理に適した直交交換アルゴリズムの確立を行った. その結果,本画像処理は,スペクトル拡散により画像の階調のダイナミックレンジが圧縮可能である性質を利用し,帯域制限された伝送路またはノイズ環境下においてSN比を確保しつつ画像を伝送可能であることが明らかとなった.今後は,本画像処理の電子透かしへの応用,また,専用ハードウェア化などの検討を行う予定である.
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