研究概要 |
本研究課題では,プロセッサ時間の保護機構を持ったリアルタイムOSの基礎理論および実装技術の研究を行っている。 1年目にあたる平成11年度には、基礎理論面の研究として、Earliest Project Deadline First (EPDF)アルゴリズムの検討ならびにシミューレーションによる評価を行った。EPDFアルゴリズムは、proportional share resource allocation (PSRA)方式を拡張して、固定的なプロセッサ時間を配分されるモジュール(FSM)と、重みに比例したプロセッサ時間を配分されるモジュール(PSM)を統合してスケジューリングすることを狙ったアルゴリズムである。 平成11年度の研究の中で、モジュールが要求するプロセッサ時間が既知でない場合には、FSMとPSMが混在すると、両種類のモジュールを流体モデルと同等の結果になるようにスケジュールするアルゴリズムは存在しないことが明らかになった。そこで本研究では、流体モデルと同等の結果になるという前提を緩めることにした。具体的には、PSMへのプロセッサ時間の配分が遅めになることを許容して、FSMに配分されるプロセッサ時間を厳密に保証するようにした。その方針により設計したアルゴリズムを、シミュレーションによって、上記の条件通りに動作していることを確認した。 また、RTOSの実装作業の前段落として、各モジュールが使用したプロセッサ時間を計測する方法に関して検討し、そのオーバーヘッドを計測・評価するなどの基礎的な検討を行った。当初、平成11年度内にRTOSの実装作業を開始する計画であったが、前述の理論面の困難が明らかになったため、実装作業の開始は2年目に持ち越すことになった。
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