今年度はi)並列化・コード最適化処理適用順序に関するヒューリスティクスの調査、ii)選択的データフロー解析適用技術の開発を行うことを計画し、以下の成果が得られた。 1.統合的並列化・最適化に関する成果として、分散メモリ型並列計算機を対象とするデータ・プログラム同時分割アルゴリズムを情処論に発表した。同アルゴリズムを実装して評価したところ、分枝限定法を用いていることもあり大きな問題には実用的な時間で解が得られなかったため、枝刈手法を検討し、ICS'99のワークショップにおいて発表した。一方、遺伝的アルゴリズムによるデータ・プログラム同時分割の予備評価を行ったところ、大きな問題でも実用的な時間で解が得られるとの知見が得られた。今後は遺伝的アルゴリズムの利用を検討していく。 2.データ依存解析、データフロー解析のための数学的ツールとして、剰余区間演算を提案し、PACT'99において発表した。剰余区間演算は、従来浮動小数点の誤差解析等で持ちられていた区間演算に法と剰余の概念を導入し、整数集合に対して代数演算および集合演算を定義した演算体系である。剰余区間演算は自動並列化コンパイラにおけるデータフロー解析ならびにデータ依存解析に応用できる。剰余区間演算は演算の際に、実際の整数集合よりは大きな答えを出すという演算誤差が生じ、これはデータ依存解析ならびにデータフロー解析の精度低下につながる。剰余区間演算の誤差削減法を数理モデル化と問題解決シンポジウムにおいて発表した。 その他、周期的参照を受ける配列のデータ分割法、視覚的プログラム並列化法に関する発表を行った。
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