研究概要 |
本年度は,研究実施計画に基づいて研究を行い,以下の成果を得た. 1.ネットワーク状態の観測方法の検討 ネットワークの遠隔監視装置であるRMON2プローブで観測可能なネットワーク状態情報として,現在行われている通信の単位時間当りの通信量の総合計及び通信先毎の合計などに着目し,これらの情報を収集するプログラムを作成した.また,ルータ用計算機で観測可能なネットワーク状態情報として,TCPコネクション確立時間,最近の重複確認応答パケット数,伝送エラーに対する回復時間などに着目し,これらの情報を収集するプログラムを作成した. 2.動的負荷分散機能の設計及び実装 上記の情報のうち,最も容易に実現できるTCPコネクション確立時間を用いた動的負荷分散機能を設計し,ルータ用計算機に実装した.また,その他の観測値については,新しいコネクションが得たネットワーク帯域と観測値との関係を明らかにするため,実験用プログラムを作成した. 3.実験ネットワーク上での評価 ルータ用計算機を中心に,マルチホーム環境と同等の実験ネットワークを構築し,このネットワーク上でTCPコネクション確立時間を用いた動的負荷分散機能の性能評価を行った.その結果,負荷が適切に分散され,実験ネットワーク上での本手法の有効性が確認できた.また,単位時間当りの通信量を観測する方法については,ネットワークの構成によって通信量の総合計と通信先毎の合計のどちらが負荷の尺度として適しているかが異なることが判明した.更に,重複確認応答パケット数及び伝送エラーに対する回復時間はいずれも新しいコネクションが得たネットワーク帯域と高い相関関係を持つことが判明した. 平成12年度は,これらの成果をもとに実際のインターネットを用いて評価を行い,ネットワーク特性の実用的な評価方法を確立して効率良く負荷分散を行う方法を実現することを目指す.
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