研究概要 |
関数f(x_1,…,x_n)を計算するO(n^2)時間のアルゴリズムを設計したとする。はたして、良いアルゴリズムか否かはどのように評価すれば良いだろうか。微小な関数ε(n)に対して、O(n^2/ε(n))時間のアルゴリズムの非存在性が証明できれば、アルゴリズムの最適性が示されたことになる。しかし、実は最適性の証明は非常に難しく、線形時間よりも大きい計算時間を必要とすることが証明された具体的関数は、かつて見つかっていない。本研究では、計算時間の最適性が証明できる具体的問題を人工的に作成し、その問題を論理合成CADなどの自動設計システムの評価に役立てることを試みている。 本研究では次の3点を目標に定めた。(i)計算機の能力は計算時間をほんのわずか増やすだけで真に上昇するという「計算量クラスの階層性」の理論的証明。(ii)t(n)時間とt(n)/ε(n)時間の計算量クラスを分離する具体的問題fの人工的な作成。(iii)この問題を利用した自動設計システムの評価。 平成11年度は、主に(i)に従事し、以下の研究成果を公表した。 1.最も単純な並列処理システムであるセルオートマトンにおいて、「時間計算量の階層性」を証明した。本結果は、ルーマニアで開催された国際会議(12th International Symposium on Fundamentals of Computation Theory)にて成果を公表した。 2.直列計算機モデルであるチューリング機械において、「領域量の稠密な階層性」を証明した。本結果は、電子情報通信学会論文誌にて公表した。 3.2点スプライシングシステムと呼ばれる新しい動作原理の計算機構を考案し、「システムの能力上昇の仕組み」を解明した。本結果は電子情報通信学会論文誌にて公表した。
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