研究概要 |
本研究の目的は、非線形楕円型偏微分方程式の境界値問題の解の数値的存在検証を従来法よりも簡便・精密・高速に行なう方法を開発することであった。 11年度前半 まず、Plum,Nakao,Oishiらの従来法や関連研究の現状を徹底的に調査し、その問題点を明らかにした。具体的には、Plum,Nakaoの方法は純関数解析的手法にしたがっているために、検証の全てを計算機に行わせことは本質的に不可能である。また、Oishiの常微分方程式に対する検証法は検証の途中で変数係数線形系の非同次非同次問題の解析解を利用しているが、変数係数偏微分方程式の非同次非同次問題の解析解は一般に表すことができないために、Oishiの方法を偏微分方程式系に応用することは難しいことが分かった。 11年度後半 1次元境界値問題に対するステップ関数係数線形系アルゴリズムを構築した。Oishiの方法では関数空間上の点の計算機上での表現法として多項式を用いていた。これをステップ関数にしてもOishiの方法と同様に1次元境界値問題の解の数値的存在検証が可能であることを示した。本結果を国際会議1999 International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applicationにて発表し、一定の評価が得られた。 12年度 しかし、ここで新たな問題が生じた。ステップ関数は四則演算や初等関数に関しては閉じているものの、積分演算を行うとステップ関数にならない。これを簡単に解決する方法は、積分結果である区分1次関数を包み込む区分ステップ区間関数を積分結果と考えることであるが、積分演算を行う度に得られる区分ステップ区間関数の幅は広がってしまう。Oishiの方法は随所に積分演算を用いており、大規模複雑な問題に対しては、最終的に得られる区分ステップ区間関数の幅は爆発してしまうため、本手法が効率的とは言い難かった。そこで、Oishiの方法で随所に現れる積分演算を1つにまとめるように同値変形を行い(積分演算を無くすことは不可能)、区間幅を最小限に抑えることができた。本結果を国際会議2000 International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applicationにて発表し、一定の評価が得られた。
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