平成11年度の研究では、(1)対話音声中の言語的・非言語的パターンの中から対話が円滑に行われるために重要な特徴を見出す手法の基礎的な検討、(2)音声対話システムのプロトタイプの作成、の2点を計画として挙げた。(1)については、現時点で研究目的に利用可能な音声対話コーパスが質・量共に満足行くものでないことが明らかとなったため、研究代表者が中心となって独自の対話データベースを新たに作成することとし、その設計を進めている。同時に、非言語情報の自動獲得法の一環として、隠れマルコフ網に基づく環境音のモデル化について研究を進め、自己組織化的な学習手法によって環境音の構造を獲得できることを明らかにした。現在、この手法を対話音声中のフィラーの獲得やパラ言語情報の獲得に応用すべく検討中である。(2)については、会議室予約をタスクとした音声対話システムの主要構成要素のうち、頑健な音声フロントエンドと意味理解モジュールの実装をほぼ終えている。意味理解モジュールについては単一化文法に基づく発話単位の部分解析法を考案し、ユーザにとって負担の少ない自発的表現の多くを少数の文法規則でカバーできることを確認した。この解析法は、計画段階で挙げた拡張容易な文法記述という目標をある程度達成したものと考えている。しかしながら、現在対話制御モジュールとユーザへのフィードバックに関する部分が不足しており、完成を急ぐ予定である。
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