研究概要 |
自然な多言語間会話の支援環境を提供することを目的として、本研究では、英語と日本語との双方向対話翻訳を対象とし、日英同時翻訳システムに関する研究を実施する。本年度は,システムを実現するための基礎データの獲得、および、同時翻訳手法の開発のために、以下に項目を研究した。 1.同時通訳対話コーパスの作成と分析 同時通訳者を介した対話ならびに講演を収録した。対話は、旅行ドメインにおける典型的なタスクを設定し、英日・日英の二人の同時通訳者を用意し、模擬的に実施した。講演は、一人の同時通訳者を用意し英語スピーチと日本語スピーチを収録した。総収録時間は、約10時間である。これらを,転記し対訳コーパスを作成した。コーパスを用いて、通訳特有の現象を調査した。 2.日本語と英語の構造に関する比較調査 ATR音声言語データベースを用いて日本語と英語の語の生起順序について比較検討した。述部の位置に関する対応関係について調べた結果、その結果、態の変形など、日本語と類似した語順で英語を生成するための方法が明らかになった。 3.漸進的な日本語解析手法の検討 係り受け解析をもとに漸進的日本語解析手法を開発した。これにより、入力に対して随時それまでの係り受け構造を作成できる。また、漸進的構文解析を実時間で実行するための文法記述方式を開発した。 4.漸進的な日英話し言葉翻訳手法の開発 動詞の早期予測技術を開発し、それに基づく漸進的日英話し言葉翻訳手法を実現した。また、そのプロトタイプシステムを作成し、ATR対話データベースを対象とした評価実験を通して本手法の利用可能性を確認した。
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