研究概要 |
本研究では,マルチエージェントシステムにおいて,各エージェントが持つ知識の間の無矛盾性を知識の最小限の変更により維持し,エージェント間の合意として形成できる知識,および合意形成操作を形式化した.特に,すべてのエージェントの知識を平等に扱う一般的なモデルを構築し,既存の知識変更モデルを包含できることを示した.このモデルは,知識変更が知識の解釈の間の順序関係に基づいて定義されるものである.具体的には,まず,各知識の全てのモデルを平等に扱う弱仲裁操作を定義し,この操作がReveszのモデル(仲裁操作)の一般化であることを明らかにするとともに,仲裁操作より自然なモデルであることを示した.次に,各知識の記述を平等に扱い,知識を結合する操作として推定操作を定義し,さらに推定操作を一般化した集合修正操作を定義した.この集合修正操作はAGMモデルや勝野らのモデル(修正操作),およびReveszのモデル(仲裁操作)の一般化でもあることを明らかにした. また,上記の合意形成のための知識変更モデルを計算機上に実現するための準備として,非単調論理のひとつであるマルチエージェント自己認識論理(MAEL)に基づく推論システムを開発した.特にタブロー法と導出原理を利用して,効率的に推論を行う手続きを考案し,それを実現した. 本研究の結果,既存の知識変更モデルを包含する一般的なモデルを得ることができ,マルチエージェントの合意形成のための理論的手法を確立するための基礎を構築することができたと考えられる.
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