本年度は、対象物の持つ運動を見る位置や姿勢などによらず識別可能にする運動幾何的不変量が如何なる場合に存在するかを、変換群の存在条件をもとに調べた。まず、空間軸に時間軸を加えた時空間を考え、これを画像に投影してできる時空間との間での時空間投影の性質を調べた。この結果、空間軸の投影法として透視投影を考えた場合には、時空間投影が群れを成さないこと、また空間軸の投影法として弱透視投影を仮定した場合には時空間投影がアフィン変換群を成すことがわかり、弱透視投影時にはアフィン不変量が存在することが明らかになった。以上の結果をもとに時空間投影のもとで不変となる時空間不変量を、拡張された時空間におけるアフィン不変量として導出した。 実際にはメトロノーム振り子や時計の針の運動などを様々な視点から撮影し不変量を計算した。この結果、同じ運動では視点によらず不変量が一致し、異なる運動では異なる不変量が観測され、時空間不変量により対象物の持つ運動が視点によらず認識可能であることが確認できた。また数式処理ソフトを使った解析により、画面ノイズが加わった場合の時空間不変量の安定性を調べた。この結果、得られた時空間不変量は十分に安定であり、異なる運動を識別する能力があることが確認できた。 現在までに導出した時空間不変量は平面運動の識別に限定されているため、来年度はこれを3次元運動に関する時空間不変量に拡張し、さらにこれを応用したビデオ動画像検索法などの開発を目指す。
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