11年度の研究より、見る位置や姿勢などによらずに、対象物の動作や運動を識別することが可能な動的特徴に関する不変量(時空間不変量)が存在することが明らかになった。そこで本年度は、この時空間不変量を用いることにより、任意の視点から撮影したビデオ動画像中から特定の動作や運動を検索する方法について研究を行なった。 まず、動画像中の特徴点の運動から求めた時空間不変量をもとに不変量曲線を計算し、この不変量曲線の一致度を見ることにより、視点の違いによらずに運動の同一性を識別する方法を示した。実際に特定の動作や運動を任意視点の連続画像中から抜き出す動作運動検索システムを作成し、時空間不変量を用いた運動検索の有効性を調べた。人間のジェスチャの検索実験や機械的な運動の検索実験を行なった結果、短時間の運動を識別することは難しいが、長時間の運動であれば時空間不変量中に十分な特徴が存在するため、視点の違いによらずに安定に検索が行なえることが明らかになった。 しかし時空間不変量をもとに動作や運動の検索を行なう場合には、不変量を計算する時に時間軸方向のサンプリングの同期を取らなければならないという新たな問題が生ずることが明らかになった。そこで、微分幾何学的に定義される新たな時空間不変量を導出し、これにより動作運動検索時の時間軸サンプリングの同期問題が回避可能であることを示した。 今後、提案した時空間不変量による運動識別法を医療福祉分野に応用することにより、患者の動作や行動をもとに病状を判定する方法や、視点に依存しない手話の自動認識法などの開発を行なって行く。
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