研究概要 |
本年度は,当初計画していた背景知識中の例外を含む知識の知識獲得への利用と,負例が明示されない場合の正例と背景知識からの負例導出手法の開発に関して,特に後者について重点的に検討を進め,その他にも本研究に必要不可欠な知識獲得の効率化について検討を行った.具体的な研究内容は以下の通りである. 1.事例間の類似性に基づいた正例・背景知識からの負例の導出法の定式化の提案 提案手法では,背景知識に記述される各事例の属性値の出現確率に基づき事例間の類似度を定め,それに基づき目標概念に含まれると予測される事例から構成される近似空間を規定した.その結果,近似空間に属さない事例を負例として利用すると共に,そのような事例が存在しない場合には,可能な属性値の組合せから負例が取り得る組合わせを予測して仮想的な負例を導出する事を可能とした. 2.例外を含む知識の獲得における仮説探索の効率化手法の検討 目標概念を記述する仮説と呼ばれる倫理式の探索時における,仮説の予測値的な評価値に基づいた効率的な探索アルゴリズムと,大量データを想定した際に得られる統計的情報を利用した探索空間の削減手法を提案した.本研究では,例外に関する知識も獲得する事を前提としており,従来システム以上に仮説探索の効率化を図る必要がある.上述の2つの手法は,本研究におけるプロトタイプシステムにおいて,共に従来と比較して約20〜30%程度の効率化に成功している. 尚,背景知識中の例外を含む知識の利用に関しては,帰納論理プログラミングシステムの基礎となる論理体系が例外を適切に処理できるものであれば,従来の知識生成メカニズムを一部拡張すれば利用可能であるという見通しが得られたので,次年度において,その理論的検証とシステムへの実装,および実験的評価を予定している.
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