研究概要 |
本研究の目的である概念設計段階における有用な再設計案を提案する再設計支援システムの設計と実現を目指して,再設計タスクの4つのステップのうち,3番目にあたる「再設計案生成」に焦点を絞った研究を行った.まず,機能構造を大きく変える再設計の実例を収集し,分析した.設計方法論,価値工業(VE)や経営工学(IE)などの文献から例を収集し,例を改善要求,評価基準,機能構造の変化,注目した機能または方式などの要素に分解・整理した.次に,これらの再設計例から一般的な再設計知識を抽出した.ここで機能を部分機能へ展開する際に注目した原理や現象,構造などを「方式概念」として明示化することで,機能を達成する様々な方式を本質的属性に基づいて体系化することができることが明らかとなった.従来の知識整理ではこのような概念は暗黙的な背景知識となっており,このことが従来の方式的知識において分類の観点が混在しまた必要以上に複雑になっていた原因のひとつであると考えられる. 次に,考察の結果に基づいて,再設計知識を計算機上に記述した.本年度では単純な問題空間モデルに基づき,ルール形式で知識を定式化した.これらの知識を解釈し,実行する再設計案生成モジュールの第1版を実装した.モジュールはWindows NT上のAllegro Common LISPで実装されており,知識の適用条件に基づいて適用すべき再設計知識を決定することができることを確認した. 再設計知識には,上述の機能達成方式知識のほかに,再設計のアプローチを規定する戦略知識が重要である.本年度の基礎的考察に基づき,来年度においてさらなる検討を加える予定である.
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