研究概要 |
本研究では,大規模知識データベースを対象とした知識獲得システムの実現方法と明らかにすることを目標としている.本年度は,つぎの項目を中心として研究をすすめた. (1)知識獲得の統一的モデル.一階述語ホーン節論理を知識表現言語とし,データからの知識獲得の計算複雑性を解析した.特に,帰納論理プログラミング分野と計算学習理論分野で別個に研究されたきた,ホーン節論理のさまざまな部分クラスに対して,既知の結果について調査を行った.さらに,これら従来の知識獲得手法が,証明補完という同一の枠組みで記述できることがわかった. (2)効率的アルゴリズムの開発.前項で得られた統一的な枠組みにもとづき,ホーン節論理の部分クラスに対する一般的な知識獲得アルゴリズムを与えた.さらに,一定の条件のもとで,このアルゴリズムが質問複雑さと時間計算量の意味で,効率良く未知論理式を同定することを示した. (3)これらの知識表現の特殊な場合として,テキストデータや,木構造データ等に対して,パターンに基づく知識表現を用いた知識発見が盛んに研究されている.テキストデータにおけるパターン発見の問題を考察し,いくつかの問題に関して,外部記憶に存在する大規模なデータからの高速なパターン発見が可能であることを示した.また,システムを実装し,系列データを対象に,知識獲得実験をおこなった. 平成10年度は,(1)項と(2)項の解析に基づいて,(3)項のアルゴリズムをより一般的な一階述語論理に一般化し,効率良い知識獲得アルゴリズムを開発する予定である.さらに(3)項に関して,前年度の予備的実験にもとづいて,知識獲得システムを実現し,知識獲得実験をおこないたい.
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