研究概要 |
今年度は人工生命型発見システム(S-System)の発想能力および探索能力の向上を行った。S-Systemは,関数を遺伝子として表現し,アルゴリズムに有性生植・無性生殖等の生物のさまざまなアナロジーを導入している。解へ収束しやすく,得られる関数長が比較的短い。さらに発想能力を向上させるために,生物学における門の概念を導入した。これにより類似モデルばかりに発想が偏ることを防ぐことができる。また,探索能力を向上させるために,引き返しの概念を導入した。人工生命(虫)がエネルギーの小さくなる方向に移動した場合,逆方向に引き返す。これにより解への収束時間が短縮される。 次に,簡単なレンズ設計への応用を試みた。今回はモデルの有効性を確認するため2次元モデルを用いた。本設計方法では,入射光を入力データ,結像位置の光強度を出力データとみなす。すると,入出力データに一致する関数(光学部品の形状)が自動的に発見される。主に点を点に結像する凸レンズの設計を行った。その結果,光源位置,焦点位置,光源数を変化させても,それに合わせてレンズの形状を適応的に様々変化させることができた。また,液晶のバックライト設計も試みた。現時点では必ずしも最適な形状を設計しているとは言えないが,専門知識を持たない人間が直感的にこれらの形状を発見することは容易でない。また,本方法では進化の過程で様々な形状の部品を持つ虫が誕生する。これらの部品を基に用途に合わせて人間がさらに改良を加えることも可能であり,本手法の有効性が確認された。
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