研究概要 |
本年度は,マルチエージェントシステムに基づく適応的画像認識システム実現の一環として,主にシステム構成・知識モデルについて検討・提案した。 システム構成については,認識の対象となる画像中の物体(以下,認識対象と呼ぶ)間に存在する所属関係を反映するために,マルチエージェントシステムに階層関係を導入した。各エージェントは個々の認識対象を担当し,各自の親エージェント・子エージェントとの所属関係を変化させることによって状態を変化させる。そして,各自が有する認識対象の数量的評価基準を参考にして所望の領域の獲得を目指す。さらに,領域獲得の過程において,認識対象間の関係制約を反映した処理が,各エージェントに適用される。その結果,個々のエージェントにおいて数量的な評価がされつつ,エージェント間の関係検証を通じて,認識対象間で満たされるべき関係制約が満足されるといった処理がなされる。これは,いわゆる信号処理と記号処理の融合の一アプローチであると捉えることができる。 また,提案システムの各種画像認識問題への適用を考慮して,システムが取り扱うことができる知識モデルを定義した。本モデルは,各エージェントが利用する知識の形式を定義するもので,認識対象の数量的評価基準,他認識対象との関係知識などの定義を要求する。個々のエージェントは,各自が担当する認識対象に関する知識を,このモデルに則した形で有する。ユーザは,与えられた画像認識問題における認識対象に関する知識を,このモデルに則した形で記述してシステムに与えることにより,様々な画像認識問題に提案システムを適用することができる。 以上の考え方に基づくシステムを,文書画像からの文字切り出し問題と,手書き線画の解釈問題に適用した。その結果,問題の内容に応じたシステムの微調整を必要とせず,単にエージェントの知識を取り替えるだけで,これらの問題に対処することができた。
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