研究課題である「言語を伝達の媒体とするシミュレーションの開発」のために、平成11年度においては、シミュレーションの対象とした海外為替の変動がどのようにエコノミストらによって表現され、どのようにレポートとしてまとめられるのかについて調査した。対象として米ドルと日本円の変動について着目し、その変動予測を考える上で必要になる情報の分析をおこなった。具体的には、数値情報として発表とれる経済統計指標の数値情報、為替の変動傾向をしめすグラフの動向によるイメージ情報、また要人発言によるテキスト情報などであり、それらの情報がどのように為替変動予測において適切に用いられるのかについて考察をおこなった。また、変動予測が実験にどのようにおこなわれているのかを調べるために、新聞記事からエコノミストらが予測する予測のプロセスを抽出し、その当時の経済状況において彼らがどのような手順を経て予測をおこなっているかを抽出し、それらの情報をデータベース化する作業をすすめた。 また、さまざまな為替の変動を表現するグラフなどがエコノミストらの予測の判断材料になるときに、為替変動を示すグラフがどのように言語として認識され、彼らのなかでグラフの動きを言葉により認識された情報として利用されるかについて考察をおこない、シミュレーションのなかでグラフというイメージ情報を言葉という共通の情報媒体で認識することにより様々な情報の間にある隔たりをなくし、より人間をおこなっているような言葉によるシミュレーションをおこなうためのひとつの技術的な提案をおこなった。
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