人間の音声は、音声生成器官の複雑な働きによって作られる音である。発声器官は主に、肺、声帯、声道、舌、口蓋とそれらを動かす筋肉などから成り、互いに適当な位置や形状を形成することにより言葉が生成される。本研究は、人間と同等の発声器官を機械系によって構成し、人間のように聴覚フィードバックと自己学習によって人間らしい音声を獲得していくこと、更に音声学習機構と関連づけて人間の学習過程を解明していくことが目的である。 人間の発声機構は大きく分けて、声帯振動による音源の生成と、声道部共鳴によるホルマントの付加という二つの働きによって構成されている。主として顎や舌の非定常な動作によって引き起こされる変化から子音が生成され、母音は定常的な声道形状を形成することによって生成される。この発声機構を、エアコンプレッサ、圧力調節弁、流量調節弁、人工声帯、調音用共鳴管、マイクロホン、音声解析用計算機から成る機械系モデルによって構築した。7つのモータ(流量操作:1、声帯操作:1、共鳴管操作:5)によって機械系ダイナミックに制御することにより、聴覚フィードバックを用いた学習によって人間のように機械系が自ら音声を獲得できることを示した。更に、声帯部と声道部について音質向上のための検討をおこなった。現在は、シリコーン製の実物大の医療訓練用人体モデルにモータを組み込み、顎の開閉と舌のフレキシブルな動き実現のための検討を進めている。次年度は、子音発音のための動作機構と制御アルゴリズムの検討をおこなう。更に、機械モデルによる音声獲得と人間の学習機構の解明を通して、新しいヒューマンインタフェース実現の面からも検討をおこなっていく。
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