研究概要 |
本研究では,視覚による移動ロボットの自律走行を目指し,ロボット自身が視覚からマーカー(目印)を見つけ,それに基づいて走行を可能とするロバストな視覚の実現を目的としている. 本研究においては,ロボットにランドマークなどの目印を与えるのではなく,ロボットが,自らの視覚で得た画像中からランドマークになり得る目印を抽出するというアプローチを取った.これは,人間の視覚で見える物がロボットにとっても見やすいとは限らないためで,ロボットに見やすいように環境を整備する(このような環境整備は人間の感覚的な要素が暗に含まれていると考えている)のとは逆に,ロボットにとって見やすいものを積極的にマーカーとして利用しようというアイディアである.そこで本研究では,画像を表色系の色度分布に変換し,画像全体の色彩を評価し,目立つ色の対象物をマーカーとして抽出する手法を開発した.さらに,ロボットの視点の移動および明るさなどの環境の変化に影響されないように,あえて対象物の形状を求めないことにし,フラクタル理論による形状の複雑さから同一の対象を特定する手法を開発した.なお,これによって抽出されるマーカーは人工物だけに限らず,自然にある対象物であっても構わない. 本年度においては,これらの手法を移動ロボットに実装し,屋外環境を実環境としてロボットの直進走行を例題とした実験を行った.その結果,屋外環境においてもロボットは移動しながら,標識や植え込みなどをマーカーとして抽出できた.そして,それらを注視しながら,マーカーの位置計測を行い,視覚サーボによって高い精度で直進走行を実現することができた.このことから本手法は,環境を整備しない実環境であっても比較的ロバストにマーカーを抽出でき,かつ移動による見え方の変動があっても同一のマーカーを特定できることを確認した.
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