近年、複数の自律的な組織によって管理されたWWW埋め込み型情報資源のネットワークが普及するにつれ、それら情報源を移動ユーザが自分の携帯端末を通してアクセスする状況が増えている。本研究では、このような状況において、移動ユーザが自分の持つPDA上で直接的にWWW情報源の統合を行う機構(ナビゲーション型統合)を提案している。提案した統合方式では、WWW情報源のサービス提供機能はリンクとして抽象化され、WWW情報源の出力コンテンツの対応データ項目から別のWWW情報源のサービスを呼び出す形で統合が行なわれる。 平成12年度には、平成11年度に構築したナビゲーション型統合を行うデータモデルの定義と基本システムを拡張し、その適用範囲を広げた。すなわち、従来から提案してきた異種データの競合解決の機能を、複数の異るネットワーク環境上で行えるように拡張した。また、取り扱い可能なWWW情報源の範囲を、半構造文書やJavaアプレットおよびCGI機構のサーバ機能のみから、実行可能コードを含むユーザインタフェース部分にまで広げた。これによって、ナビゲーション型統合の実体化の途中であっても、ユーザとの対話処理が可能になることが可能となった。 上記の方式に基づいて、本システムを実働させる試験環境を構築し、いくつかの典型的な移動ユーザ利用環境の下で評価を行なった。特に、移動ユーザの位置に依存したコンテンツを提供するような情報源を複数用意し、これらを用いて位置依存のコンテンツの統合をユーザの携帯端末上で指示できるようにした。これらの成果により、移動ユーザによる情報源利用環境において提案方式が有用であることを確認した。
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