本年度は、静的環境における複数の視点から全方位画像から立体視可能な画像への変換方法の確立した。具体的には、以下の2種類の方法を確立した。 一つは全方位画像センサHyperOmni Visionをならべて得られる全方位画像を入力として、この全方位画像に対してステレオ法を適用した。ステレオ法は複数の画像から対応点を求め、三角測量の原理を用いて対象までの距離を推定する。しかし、従来の一般的なステレオ法ではカメラは平面透視投影モデルであることを前提としているため、距離を推定できる範囲はある限定された領域のみであった。それに対して本手法ではこのステレオ法を全方位画像に適用することにより、HyperOmni Visionの周囲360度の対象までの距離を推定可能にした。HyperOmni Visionは透視投影の光学特性をもつが平面透視投影ではないため、ステレオ法の対応点探索に必要なエピポーラ線が全方位画像上では曲線になってしまう。そこで、本手法では全方位画像をベースラインを軸とする円柱面に投影しなおすことによりこのエピポーラ線が直線による画像に全方位画像を変換した。これにより全方位画像でありながら従来のステレオ法と同じ様々なステレオ法を適用可能になる。今回はこれを3眼視に拡張し精度の向上を行い実装した。実験では3枚の全方位画像より本学の実験室全体の3次元モデルを作成し、立体視可能な画像を生成できた。 二つ目はHyperOmni Visionを移動ロボットにより移動させ得られる時系列全方位画像に光線追跡法を適用し立体視画像を生成する方法である。光線追跡法はある空間内に存在する光線をすべて記録し、その空間内の任意視点方向の画像を生成できる手法である。従来、光線追跡法はカメラを縦横に動かしある面を通過する光線をすべて記録する。しかし、カメラが一般のカメラであったため、全方向の画像を生成することはできなかった。本手法ではこの光線追跡法をHyperOmni Visionに適用し、さらに擬似的な画像しか生成できないがセンサの移動を2次元から1次元に簡単化した。これにより、HyperOmni Visionが移動した周囲の視点から任意の方向を向いた画像を生成可能になる。実験では実際に等速直線運動したHyperOmni Visionより得られた時系列全方位画像より立体視可能な任意方向の画像を生成できた。この方法は探索を必要としない処理であるため計算コストが低く、センサの移動も一次元であるため任意方向の立体視可能な画像を実時間で生成することも可能である。
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