現在、多くのプラットフォームで広く流通しているJavaの実行プログラムは、ユーザや第三者によって盗用されやすいという問題を抱えている。ここで言う盗用とは、他人の開発したプログラムの一部または全体を、正当な権利なしに自分のプログラムに組み込み、流通させることである。 本研究では、まず、Javaプログラムの盗用を抑止する一つの方法として、プログラム開発者の著名等を電子透かしとして挿入する方法、および、取り出す方法を提案した。提案手法により挿入された電子透かしは、Javaバイトコード検証器のチェックに影響を与えず、かつプログラム実行効率にも影響を与えないため、実用的である。万一、クラスファイルが盗まれ、そのクラスファイルを含んだプログラムが再配布された場合にも、プログラム中から電子透かしを取り出すことで、盗用の事実を容易に立証することができる。 次に、本研究では、提案した方法を電子透かしシステムとして実装した。実装したシステムは、(1)透かし挿入部を追加するツール、(2)透かしを挿入するツール、(3)透かしを取り出すツールの三つの部分から成る。本システムを用いることで、透かしを挿入した者は、盗用されたクラスファイルを含むJavaプログラム中から、容易に透かしを取り出すことができる。 最後に、実装したツールを用いて、透かしの耐性を実験により部分的に評価した。実験の結果、obfuscatorと呼ばれるプログラムの難読化ツールによる攻撃後も電子透かしは消えないことを確認した。今後も継続して評価を行っていく予定である。
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