1.評価用毛筆漢字文字データベースの作成 評価用毛筆漢字文字を、基本的な "とめ"・"はね"・"はらい"を含む「氷観」に決定し、書道家に"紙"・"筆"・"墨"の組み合わせを変え て400枚程度の書をしたためてもらった。その後、有段者10名にそれぞれの感性に基づいて、それらの書を10程度の印象に分類してもらい、その印象の中で代表的な文字を基本評価用データとして30枚採用した。基本評価用データを含む全ての書は電子化され、その文字を書いた時の"筆"・"墨"・"紙"の情報を元にデータベース化された。データベースはブラウジング機能をもち、個別に書を鑑賞できるが、今後は書の特徴によって抽出、表示が出来るように発展させていく予定である。 2.感性情報の定義と評価尺度の検討 今回は、書をみて得られた評価語を感性の表出と捕らえて、書を鑑賞した際の印象を評価語として用い、主観評価を行った。評価語は書道心理学の専門書より抜き出した形容詞を整理し、反対語と合わせた評価語対とした。評価語は7段階に区分した数直線の両端に配置し主観評価実験の際は、27評価語対それぞれどちらに近いかチェックする方法をとった。 3.心理要因における基礎的因子の抽出 個々の評価語対を用いて主観評価を各50名づつ行った結果、それぞれの書の特徴において特徴を表す評価語が抽出された。これらの評価語 と書における特徴を関連つけることによって物理要因を定式化することを今後試みる。 4.毛筆漢字文字評価における心理要因と物理要因との対応づけ 個々の書の評価により、人が文字を評価する際に注目する点は、主に以下の5項目と考える事が出来る。 (1)文字の大きさ(2)文字の太さ(3)文字の止め、はね(4)文字のかすれ具合(5)墨の濃さ上記(1)と(2)を満たしているものは力強くのびのびとした印象を受けやすく、また(3)、(4)を満たしているものは、丁寧、形の整ったという印象を受けやすい。(5)に関しては、薄ければ弱々しい、濃いと力強いという印象を受ける事が明らかになった。 今後はさらに評価実験を進め、それぞれの要因を定式化して評価システムの構築を試みる。
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