本研究課題においては、限られたネットワーク帯域での対話演奏に有効なモデルとして音響モデルのパラメータ送受信を用いるシステムの研究・開発を行った。対話演奏では双方向の実時間通信が必須であるが、インターネットでは原則として帯域保証を得ることができない。近年普及している一方向のコンテンツ配信では受信側でのバッファリングによるゆらぎ吸収などの方策を用いることができるが、双方向の実時間対話では演奏のずれが問題となるため、対話演奏の形式に制限が課せられる。このため、適切なモデル化によって演奏に必要とされるパラメータを設定し、ネットワーク上で伝送されるべきデータ量を減らす研究を行った。 具体的なプラットホームとしてGUIによる直感的なユーザーインターフェースを備えるPureData(Pd)を使用し、正弦波合成、フィルタによる減算、FMモデル、のそれぞれについてネットワークを通じてパラメータを送受信し、対話的演奏を行うシステムを製作した。同システムを神戸山手女子短期大学における講義時間中に学生に使用させ、コンピュータに関する経験の少ない学生でも講義時間中にシステムを把握し、実際にLAN内での対話的演奏を行うことができることを確認した。また、東京大学と神戸山手女子短期大学の間でインターネットを経由した対話演奏の実験を行い、WAN経由での運用について検証を行った。以上の実験結果より、少ないパラメータ量でネットワーク経由の対話的演奏を行うシステムを構築することができることを実証できたと考えている。
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