研究概要 |
本研究の目的は従業員の職場と家庭へのコミットメントの先行要因として職場と家庭の諸特性をもつ効果を確認することにある.研究期間2年中,本年度は保険会社に勤務する女性外交員115名を調査対象者とし,次の検討を行った,(1)仕事,家庭にくわえ余暇の3生活領域への関与,仕事・非仕事葛藤,ワークコミットメントの諸形態の尺度に関する信頼性・妥当性の確認,(2)それぞれの相互関係の確認,(3)ワークコミットメントの諸形態に対する生活領域への関与と仕事・非仕事葛藤の交互作用効果の確認.分析から得られた主な結果は次の通りである.(1)仕事,家庭,余暇領域への関与,仕事,非仕事葛藤,職業,職務,組織,職場への関与それぞれを測定する尺度は,適度な信頼性と妥当性を備えるものであることが確認された.(2)生活領域への関与間には家庭関与と余暇関与のみ相関関係にあり,仕事関与は他の生活領域への関与と相関関係にない.(3)ワークコミットメントの形態として職業関与,職務関与,組織関与の3者間には比較的強い相関関係が認められた.一方職場関与は職業関与,職務関与および組織関与との間に有意な相関関係をもたなかった.(4)仕事・非仕事葛藤と職業関与,職務関与,組織関与および職場関与との相関係数では職務関与のみが有意でなく,他の組み合せにおける相関係数に負の有意な値が認められた.(5)ワークコミットメント諸形態を基準変数とした重回帰分析より,労働関与は職場関与以外の基準変数で有意な説明変数であり,仕事・非仕事葛藤は職務関与に対してのみ有意な説明変数ではなかった.(6)職務関与あるいは職業関与を基準変数とした場合に家仕事関与と仕事・非仕事葛藤の有意な交互作用が認められた.(7)職場関与を基準変数とした場合に家庭関与と仕事・非仕事葛藤の有意な交互作用が確認できた.(8)余暇関与に関する有意な交互作用は認められなかった.
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