研究概要 |
高圧ガス保安協会による防災指針では,プラント内の建屋等による立地障害を考慮することなく,一定風向・風速のみによる拡散式に基づき,拡散による被害を評価している.しかし,実在のプラント内には,気体が拡散する際に障害物となるタンク,建屋等が存在し,それにより拡散状態も影響を被る.そこで,建屋周囲での風向・風速の影響を考慮した拡散濃度の把握可能なシミュレーション手法を開発し,従来手法との比較,検討を行った.従来適用されている高圧ガス保安協会による拡散式に基づき,その一部を変更すれば良い点に本手法の簡便さ及び利点がある. また,風向・風速等の気象条件により拡散濃度は変動するため,確率変数として扱う必要がある.そこで,構築したシミュレーションを用いて,プラントの年平均の風向・風速の確率分布を考慮し,化学プラント内の着火源存在域における着火危険性の評価手法を提案した.その結果,容量と配置の異なるタンクから貯蔵物が流出・拡散した際の着火危険性(リスク)について,経時的かつ定量的に評価可能となることから,本手法は化学プラントの安全性対策に有用であることを示した.さらに,評価結果をプラント機器の損害額(コスト)に結びつけることにより,タンク配置や建設費等を考慮した信頼性評価(リスク評価)手法に展開できるものと考える. 本手法ならびに解析例について,日本機械学会材料力学部門講演会(於:横浜国立大,平成12年10月),第4回構造物の安全性・信頼性に関する国内シンポジウム(JCOSSAR 2000)(於:日本学術会議,平成12年11月)において発表し,その成果を示している.
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