本研究は、産業プラントの保全作業におけるヒューマン・エラー防止および作業効率向上を念頭に置き、認知人間工学的観点から保全作業について検討すること、とくに保全作業における人間の認知行動を明らかにし、認知行動モデルを導出することを目的としている。平成11年度は、プラント保全作業に関してヒューマン・ファクターの観点からの質的分類を行った。その結果、ラスムッセンによるSRKモデルとほぼ同様の分類がなされたものの、技能ベース段階においては「調整作業」という概念を導き出した。なお本研究では、調整作業とは「作業結果に潜在的な過不足生があるような作業」と定義づけた。調整作業段階で発生するエラーについて、実際のプラントで発生する不具合から考えてみると、プラントを実際に稼動するまで発見されない場合が多く、悪質なエラーであることが判った。そこで、プラント保全の中でも、先ずは、特に調整作業に関する人的特性の把握が重要と考え、作業を認知行動の観点からモデル化する際の知見を得るために基礎実験を行った。平成12年度は、実験条件を変えながらさらに実験を重ね、調整作業をはじめ保全作業における認知行動のモデル化を図る予定である。また、保全作業におけるPerformance Shaping Factorについても検討し、それが保全作業にどのような影響を及ぼすかについても検討したい。それらを踏まえ、保全作業における認知行動モデルにPerformance Shaping Factorを加味した、ヒューマン・ファクターの観点から見た保全作業提案し、プラント保全におけるヒューマン・エラー防止や作業効率向上のための一助としたい。(698字)
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